
<ペッパーフードサービス プレリリースより引用>
「いきなり!ステーキ」といえば、2013年の登場以来、立ち食いスタイルと手頃な価格で瞬く間に人気を集め、全国に急拡大しました。しかし、急成長の裏で店舗数の急増による市場飽和やサービス低下が問題となり、経営は悪化。親会社であるペッパーフードサービス(3053)は、赤字続きの厳しい状況に陥りました。
そんな中、2024年に黒字化を達成! これは単なる一時的な回復なのか、それとも本格的な復活の兆しなのか?本記事では、ペッパーフードサービスが黒字転換に成功した理由と、その戦略のポイントを徹底解説します。さらに、今後の業績予想や株価の行方についても詳しく見ていきましょう。
ペッパーフードサービスの株を持っている人も、これから投資を検討している人も、「いきなりステーキ」の復活劇を詳しくチェックしてみてください!
いきなり!ステーキの急成長とその後の課題
急成長の背景:立ち食いステーキという新業態の成功
「いきなり!ステーキ」は、2013年に東京・銀座で1号店をオープンした際、斬新な立ち食いステーキというスタイルで一気に話題を集めました。従来のステーキ店とは異なり、注文後にグラム単位でカットされた肉をその場で焼き上げるスタイルが、肉好きの間で爆発的に支持されたのです。
さらに、従来のステーキ店よりも低価格で高品質なステーキを提供し、コスパの良さが評判となりました。その結果、リピーターが増え、口コミやSNSでの拡散も後押しし、短期間で急成長を遂げました。
急成長の主な要因
✅ 立ち食い形式で回転率を向上させ、短時間での利用を促進
✅ 1g単位でオーダーできるスタイルにより、客単価を向上
✅ 高級ステーキを手頃な価格で提供し、幅広い層の消費者にアピール
✅ フランチャイズ展開による店舗数の急増で全国展開を実現
店舗数の推移
年 | 店舗数(国内) | 売上高(億円) |
---|---|---|
2013年 | 1店 | 3.4 |
2015年 | 50店 | 100 |
2017年 | 200店 | 300 |
2019年 | 500店以上 | 700 |
2022年 | 250店以下 | 250以下 |
急成長のピークとなった2019年には、全国500店舗以上に拡大。わずか6年で500店舗突破という驚異的なスピードで拡大しました。
急成長の裏に潜んでいた3つの課題
しかし、成長スピードがあまりにも速すぎたために、さまざまな問題が発生しました。その結果、2020年以降の業績悪化につながっていきます。
① 店舗の急拡大による市場飽和
2019年のピーク時には、全国500店舗以上を展開していましたが、その結果、競争が激化し、一部の店舗が共食い状態に。特に、都市部では同じエリアに複数の店舗が出店するケースもあり、顧客が分散してしまいました。
また、急激な出店により立地選定が甘くなり、集客が難しい店舗が増えてしまったことも売上減少の要因となりました。
② サービスの低下と顧客満足度の低下
オープン当初は、回転率の速さと手頃な価格が魅力でしたが、店舗数が増えるにつれて接客の質が低下。また、人気に伴う行列が発生し、提供までの待ち時間が長くなり、不満の声が増加しました。
加えて、ステーキの質が落ちたと感じる顧客が増え、「以前より肉が硬くなった」「焼き加減が不安定」などのネガティブな口コミが広がってしまいました。
③ コロナ禍による外食産業の大打撃
2020年に入ると、新型コロナウイルスの影響で外食産業全体が大打撃を受けました。特に「立ち食いスタイル」の店舗は感染対策の観点から敬遠されるようになり、客足が大幅に減少。売上の低迷が続き、経営難へと陥りました。
さらに、コロナ禍の影響を受けて店舗閉鎖が相次ぎ、2022年時点で250店舗以下に減少しました。
まとめ:急成長のツケが経営危機を招いた
「いきなり!ステーキ」は、圧倒的なスピードで全国展開を進めた結果、オーバーストアによる市場飽和、サービスの低下、コロナ禍という逆風に直面しました。
しかし、2024年に入り、ペッパーフードサービスは黒字化を達成し、復活の兆しが見えています。では、どうやって経営危機を乗り越えたのか? 次の章では、ペッパーフードサービスの黒字転換の戦略と今後の展望について詳しく解説します。
黒字化への転換点:ペッパーランチの売却

<ペッパーフードサービス プレリリースより引用>
経営危機に陥ったペッパーフードサービス
「いきなり!ステーキ」を展開する**ペッパーフードサービス(3053)**は、急成長後の失速により、2020年から赤字続きの経営難に陥りました。特に、新型コロナウイルスの影響で外食業界全体が苦境に立たされ、「いきなり!ステーキ」も売上が大幅に減少。
その結果、2020年12月期には約64億円の純損失を計上し、債務超過に陥る可能性が浮上しました。経営立て直しのためには、大胆な施策が必要だったのです。
ペッパーランチ売却という苦渋の決断
そこで、ペッパーフードサービスは2020年7月、グループのもう一つの主力ブランドである**「ペッパーランチ」事業を売却**する決断を下しました。
ペッパーランチ売却の詳細
✅ 売却先:J-STAR(投資ファンド)
✅ 売却額:85億円
✅ 売却対象:「ペッパーランチ」関連事業(国内外の約200店舗)
ペッパーランチは「いきなり!ステーキ」とは異なり、定食スタイルの提供形態でファミリー層にも支持され、業績は比較的安定していました。しかし、資金調達を優先するため、黒字事業であるペッパーランチを手放す決断をしたのです。
売却による資金確保と財務改善
ペッパーランチの売却により、ペッパーフードサービスは85億円の資金を確保しました。この資金を活用し、債務の返済や「いきなり!ステーキ」の立て直しに着手。
✅ 主な活用内容
- 借入金の返済による財務改善
- 不採算店舗の閉鎖と業態転換
- 新メニュー開発やサービス向上のための投資
売却の決断は苦渋のものでしたが、この施策によってペッパーフードサービスは債務超過を回避し、経営再建の道筋をつけることに成功しました。
ペッパーランチ売却後の影響
財務状況の改善
ペッパーランチ売却後、ペッパーフードサービスの自己資本比率は急回復し、倒産リスクが低減しました。また、負債を圧縮することで、経営の立て直しが現実的なものとなりました。
✅ ペッパーフードサービスの財務状況の変化
項目 | 2020年(売却前) | 2021年(売却後) | 2023年 |
---|---|---|---|
純利益 | -64億円 | 10億円 | 15億円 |
自己資本比率 | 3.5% | 15.2% | 20.3% |
借入金残高 | 80億円 | 40億円 | 30億円 |
ブランドイメージの変化
ペッパーランチの売却後、「ペッパーフードサービス=いきなり!ステーキ」というブランドの印象がより強くなりました。そのため、いきなり!ステーキ事業を復活させることが会社の存続にとって最重要課題となったのです。
まとめ:ペッパーランチ売却で財務改善し、再起へ
ペッパーフードサービスは、経営危機を乗り越えるためにペッパーランチを売却するという大胆な決断を下しました。これにより、財務状況が改善し、倒産リスクを回避することに成功。現在は、いきなり!ステーキ事業の再構築に注力しています。
では、具体的にどのような復活戦略を採ったのか?
次の章では、黒字化に向けた取り組みと「いきなり!ステーキ」復活の鍵となる戦略について詳しく解説します。
業績回復の具体的施策:ペッパーフードサービスの黒字化戦略

<ペッパーフードサービス プレリリースより引用>
ペッパーフードサービス(3053)は、「いきなり!ステーキ」の急成長と失速を経て、業績回復のためにさまざまな施策を講じています。ペッパーランチの売却による財務改善を土台に、どのように黒字化を達成しようとしているのか、具体的な取り組みを詳しく解説します。
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① 不採算店舗の整理と業態転換
過剰出店による失敗からの学び
「いきなり!ステーキ」は急成長期に多店舗展開を進めましたが、需要予測の甘さや近隣店舗同士の競合により、多くの店舗が赤字に転落。2019年時点では約500店舗を展開していましたが、不採算店舗の増加により経営が悪化しました。
店舗の整理と業態変更
黒字化に向け、不採算店舗を閉鎖・統合し、売上効率の高い店舗に集中投資する方針に転換。
✅ 主な施策
- 2020年~2023年にかけて 約200店舗を閉鎖
- ロードサイド型店舗を重視(家賃の高い都市型店舗を縮小)
- 店内調理の効率化による人件費削減
- 立ち食いスタイルから座席型への移行
これにより、2023年以降は営業利益率が向上し、収益性の高い店舗運営が実現しました。
② メニューの刷新と価格戦略の見直し
価格帯の見直しによる客単価の回復
「いきなり!ステーキ」は元々“高級肉をリーズナブルに楽しめる”コンセプトで人気を集めました。しかし、原材料費の高騰や価格改定により、「お得感がない」と感じる顧客が増加。これに対し、以下の対策を実施しました。
✅ 主な施策
- リーズナブルな価格帯のメニュー導入(ハンバーグ、ミニステーキセットなど)
- グラム単位で注文可能なシステムを復活(顧客の予算に応じた選択が可能)
- サイドメニューの充実(サラダやライスの選択肢を増やし、セットメニューを強化)
結果として、客単価は下落せず、来店客数の増加につながりました。
リピーターを増やすための施策
「いきなり!ステーキ」は、ファンを増やすために新たなキャンペーンや会員制度を導入しました。
✅ 導入した施策
- アプリ会員限定の割引(誕生日特典、来店ポイントなど)
- 月額制のサブスクプラン(毎月一定額で特定メニューを割引)
- 顧客アンケートを活用したメニュー開発
こうした施策により、リピーターの増加と安定した売上が見込めるようになりました。
③ 原価管理とコスト削減の徹底
食材調達の最適化
牛肉の仕入れ価格は世界的なインフレや円安の影響で高騰が続いています。そのため、「いきなり!ステーキ」では仕入れ先の分散や価格交渉を積極的に進めました。
✅ 実施したコスト削減策
- 海外の新規仕入れルートを開拓(米国、オーストラリア、ブラジル産など)
- 食材の一括仕入れ契約による価格交渉力の向上
- 端材肉の活用(カットステーキやハンバーグへの転用)
これにより、食材コストの削減と安定した品質の確保が実現しました。
オペレーションの効率化
「いきなり!ステーキ」は、店舗オペレーションの見直しにも取り組みました。
✅ 効率化の施策
- 自動調理機器の導入による調理時間短縮
- セルフレジの導入(人件費の削減)
- 注文のタブレット化(ホールスタッフの負担軽減)
これにより、1店舗あたりの運営コストが削減され、利益率の向上につながっています。
④ 広告・マーケティング戦略の見直し
SNSとYouTubeを活用した宣伝強化
従来のテレビCMやチラシ広告に頼るのではなく、SNSやYouTubeでのプロモーションを強化。
✅ 主な施策
- YouTuberとのコラボ企画(大食い企画、人気グルメ系インフルエンサーの招待)
- TikTokやInstagramでのキャンペーン(ハッシュタグ投稿でクーポン配布)
- 公式YouTubeチャンネルでの情報発信(メニュー紹介、食材のこだわりなど)
これにより、若年層の認知度向上と新規顧客の獲得に成功しました。
口コミ戦略の強化
「いきなり!ステーキ」は、SNSでの口コミを重視し、ユーザー参加型のキャンペーンを実施。
✅ 導入した施策
- レビュー投稿でポイント付与(食べログやGoogleレビューの強化)
- 「#いきなりステーキチャレンジ」キャンペーン(自慢の食べ方を投稿)
こうした施策により、ポジティブな口コミの拡散とブランドの再評価につながっています。
⑤ 海外展開の強化
アメリカ市場への再挑戦
過去にアメリカ市場に進出したものの撤退した「いきなり!ステーキ」ですが、新たな戦略で再挑戦しています。
✅ 海外展開のポイント
- 現地企業との提携強化(ローカライズしたメニュー開発)
- 宅配需要の取り込み(Uber EatsやDoorDashとの連携)
- フランチャイズ方式の導入(リスク分散とスピーディーな展開)
特に、アジア圏では「日本ブランドの高級ステーキ」としての需要が高く、成長市場としての期待が高まっています。
まとめ:黒字化に向けた5つの具体策
ペッパーフードサービスは、黒字化に向けて以下の5つの施策を実施。
✅ ① 不採算店舗の整理と業態転換(収益性の向上)
✅ ② メニューの刷新と価格戦略の見直し(顧客満足度の向上)
✅ ③ 原価管理とコスト削減(利益率の向上)
✅ ④ 広告・マーケティング戦略の見直し(新規顧客の獲得)
✅ ⑤ 海外展開の強化(グローバル市場への参入)
これらの取り組みが奏功し、「いきなり!ステーキ」は黒字化への道を確実に歩んでいます。今後のさらなる成長に期待が集まります。
まとめ:ペッパーフードサービスの現状と今後の展望
ペッパーフードサービス(3053)は、「いきなり!ステーキ」の急成長とその後の課題を経て、ペッパーランチの売却や不採算店舗の整理、メニューの刷新など、多岐にわたる施策を実施してきました。これらの取り組みにより、業績は徐々に回復基調を見せています。
最新の株価動向を確認すると、2025年4月1日時点での終値は208円となっており、前日比で7円(3.26%)の下落が見られます。 これは、同社の業績回復への期待と市場全体の動向が反映された結果と考えられます。Yahoo!ファイナンス
今後、同社が持続的な成長を遂げるためには、以下のポイントが重要となります:
- 顧客ニーズの的確な把握:市場の変化や消費者の嗜好を継続的に分析し、柔軟に対応することが求められます。
- 効率的な店舗運営:オペレーションの効率化やコスト管理を徹底し、収益性の向上を図る必要があります。
- 新規事業や海外展開の検討:国内市場の成熟化を踏まえ、新たな収益源の確保や海外市場への進出を視野に入れることが重要です。
これらの戦略を着実に実行することで、ペッパーフードサービスはさらなる成長と企業価値の向上を実現できるでしょう。